鬼滅の刃は、マンガを始め、アニメや映画が爆発的ヒットを記録していることで有名ですよね。最近では、鬼滅の刃とコラボした商品や企画が次々と大ヒットするなど、その人気は全く衰えを見せません。
しかし、なぜ鬼滅の刃はここまでの人気作となったのでしょうか。
今回の記事では、鬼滅の刃が爆発的人気を集めた理由をマーケティングの観点からひも解いていきたいと思います。
私自身、マンガやアニメ、映画とすべて見尽くしているくらい鬼滅の刃が大好きなファンの1人です。
この記事に足を止めてくださった方々の中にも、
「鬼滅の刃って書いてあったからとりあえずクリックしてみた」
「鬼滅の刃が好きだから読んでみる」
という方がいらっしゃるのではないかなと思います!
・難しいことはよくわからない
この記事を読むことで、鬼滅の刃がなぜここまでの人気作となったのか理由を知ることができるので、ますます鬼滅の刃の虜になること間違いありません!
「鬼滅の刃」快進撃の裏側に迫る
鬼滅の刃をネタバレにならないよう簡単に内容を紹介すると、鬼となった妹を人間に戻すため、鬼退治をしながらその方法を探す主人公の人生を描いた物語です。週刊少年ジャンプで2016年から連載が始まり、2020年5月にはすでに連載が終了しているのにも関わらず収まることのない人気ぶりが話題を集めています!
キーワードは”共感”と”死”
少年漫画のヒット作に共通する項目としてよく挙げられるのが、「友情」「恋愛」「勝負」「努力」「家族」などです。鬼滅の刃が若者から大人まで年齢を超えて支持されている理由としても、多くの層が共感できる家族愛や兄弟愛がストーリーに盛り込まれているからだと言われています。全体のテーマとして、誰が見ても共感できる大衆性があるのも大きなポイントの一つです!
ただこれだけでは他の漫画でもよくあることです。違いはどこにあるのでしょうか。
それは、”死”と向き合うシーンが非常に多いことだとされています。ストーリーにおいて重要な役割を果たすキャラクターが次々と死に直面していきます。そのたびに死に向き合い乗り越えていく主人公や仲間たちの様子も鮮明に描かれており、生きる価値を考えさせられるストーリー構成が話題性を呼んでいるのです。キャラクターの死を含め、緊張と緩和が目まぐるしく繰り返されることも、読者をどっぷり鬼滅の刃の世界観にのめり込ませることにつながっているのです。作中の登場人物である”我妻善逸”はビビりで泣き虫なキャラクターが印象的ですが、その姿は張り詰めたシーンの中でも少し緊張を緩和してくれますよね!
また、鬼滅の刃をマーケティング的な観点でみてみると、アニメ化の際に過去に例がない試みが行われている点にも気がつきます。鬼滅の刃がアニメ化する際の2019年3月に、映画館でアニメの第1~5話の特別版が先行上映を行われました。2週間の限定公開ではありましたが、この試みが話題を呼び、SNSなどを通じて鬼滅の刃のアニメ化の情報が広ったことが、1つの戦略であると言えます。
コロナ禍が更なる人気の追い風に
私たちは1年近くにわたり、新型コロナウイルスに関する”死”についての情報を大量に浴び、知らず知らずのうちに”死”に対する漠然とした不安や恐怖を掻き立てられてきました。人は、このような恐怖心に無防備でいられないものなのです。
社会心理学の中で、人は何かから身を守らなければという感情に掻き立てられたとき、無意識に自らが信頼する芸術的な世界観を利用して、恐怖心を緩和しようという自衛メカニズムが働くという考え方があります。
こうした社会情勢が鬼滅の刃の人気に追い風を吹かせたといっても過言ではないと言えますね。
相性抜群のネット配信
また、鬼滅の刃のヒットの要因は様々なところで多くの意見や見解が述べられていますが、結局のところヒットになった要因を後から見てもそれは単なるこじつけであり後追いでしかないとも言われています。今回の鬼滅の刃はある程度のヒットは予測されていたものの、予想をかなり超える大ヒットをしたためにこれだけの話題になっているのです。
情報社会の現代においてヒットを生み出すためには、原作のクオリティの高さだけではなく、マーケティングの力が必須となり、命運を握ることになります。
そこで目をつけたのがネット配信でした!
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い巣ごもり消費が増えたことで、動画サイトなどで配信されている鬼滅の刃の視聴回数が急激に増加しました。
いつでも、どこでも好きな時に見れるというネット配信の使いやすさが、ブームの後追いをしやすいという環境を作ったのです。
娯楽としての楽しみが、ネット配信視聴者を増加させ、そこにコンテンツとしての「鬼滅の刃」が上手くマッチしたということなのです!
ヒットの鍵は”イノベーター理論”?
ここまで鬼滅の刃のヒットの裏側について話してきましたが、これらはあくまできっかけに過ぎず、「決め手」ではありません。先ほどお伝えした通り、ヒットを生み出すためにはマーケティングの力が必須となります。
鬼滅の刃がアニメ化する前の段階でコミックは累計約350万部売れており、一定のファンがすでに存在しているコンテンツでした。ポイントは、一部のファン向けだった鬼滅の刃がアニメ化をきっかけに一般層まで広がったということになります。
そこで注目したいのが「イノベーター理論」です!
イノベーター理論とキャズム
イノベーター理論とは、アメリカのスタンフォード大学で教鞭をとったエベレット・M・ロジャース教授が提唱した新製品の普及の過程を体系的に整理した理論です。
それをまとめたのが、下記グラフと表になります!
※イノベイター理論を語る上で、各セグメントのパーセンテージは常に固定となります
画期的な新製品を爆発的なヒットに導くためには、これら5つの特徴ある消費者層に対して順番に効果的なアプローチを行わなければならないという理論になりますが、特に注目していただきたいのは「キャズム」なるものが存在するという点です!
キャズムって何ぞやとという人のために簡単に説明すると、”新しい商品が世の中に出ようとするとき、最初の市場とその後に続く大きな市場との間にある大きな溝”を指します。
このキャズムを超えてアーリーマジョリティに入ると、それまで特定のコアファン向けだった商品が一挙に一般受けするようになり、爆発的に人気が上がるというわけです。つまり、キャズムの前と後ではターゲットユーザーの中身が全く違ったものになるため、ここを超えられると国民的ゲーム、アニメ、漫画、コンテンツになれるのです!マニア向けで終わるか、みんなで楽しめるものになれるかという境目がキャズムだと言えます。
しかし、このキャズムを超えることが至難の業なのです。多くのコンテンツがここを超えられずに消えていくか、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの世界だけで生き延びています。
では次にこれらを鬼滅の刃に置き換えて、ヒットするまでの経緯を見てみましょう!
おのずとヒットの決め手が見えてくるはずです。
鬼滅の刃とキャズム
鬼滅の刃は2016年2月に週刊少年ジャンプで連載をスタートさせ、コミックの第1巻は2016年6月に発売されました。しかし、2018年6月までコミックス計11巻の累計発行部数は250万部程度とジャンプマンガの中では突出して売れているというわけではなく、その当時はイノベーターとアーリーアダプターのどこかにいたことが分かります。
そこでアーリーマジョリティにアプローチするために取った方法が、アニメ化でした。2019年4月からアニメの放送が開始。実際に見てみると分かりますが、鬼滅の刃は戦闘シーンなどアニメ化されることにより、その魅力が飛躍的に高まります!
さらに、美しい映像制作に定評があるとされるufotableが携わりアニメ化に至ったことによって、視聴者はその世界観に一瞬にして引き込まれ、放送終了時にはコミック累計発行部数は1,200万部に到達!この段階で確実にアーリーマジョリティが消費の輪に加わったと言えますね。
先ほども述べた通り、多くのコンテンツはここでキャズムを超えられずに伸び悩むわけですが、ここで鬼滅の刃がキャズムを超えるためにとった行動があります。
それは、”2クール放送”にしたこと!
「アニメ化で盛り上がったものの、1クールで終わってファンの熱が冷めてしまった」という懸念を、2クールにすることでさらに半年にわたってファンの熱を維持し続けることに成功したのです。
1クールの時点でヒットしなかった場合のリスクが2倍となってしまうため、近年のアニメではレアなケースではありましたが、放送終了後にはコミック累計発行部数2500万部まで到達する結果となりました。2クールを選んだことが、イノベーター理論におけるキャズムを超えた理由の1つであると言えます!
また、消費者を購入に走らせるためには、気持ちが高まったタイミングで商品を提供する必要があります。通常テレビ放送のアニメは見逃してしまえば再放送まで見ることができないため、Netflixなどの定額動画配信サービスにて配信されたこともキャズムを超えた理由の1つとなりました。自分の都合の良い時間に見ることが出来るため、「追加料金がかからなければ世間で噂になっているアニメを見てみよう」と興味を持つ人が増え、そのままファンとなる人もたくさんいました。
さらに、アニメを見終わった後、ファンにとっては「もっと鬼滅の刃を知りたい」という欲求を満たすコンテンツが必要となり、その欲求を満たすコンテンツとしての役割を果たしたのが漫画コミックでした。漫画コミック自体は、アニメよりも一般向けのエンタメであるので、アーリーマジョリティとの相性も抜群だったのです!
鬼滅の刃はまだまだ伸びしろアリ⁉
現在の鬼滅の刃は、レイトマジョリティに位置しています。「劇場版『鬼滅の刃』無間列車編」の記録的なヒットも、レイトマジョリティへのアプローチに成功した結果とも捉えられます!
その一番の要因は多大なるメディアへの露出だと考えられていて、テレビを始め、インターネット、新聞、雑誌、SNSなどありとあらゆるメディアでその偉業が取り上げられたことが挙げられます。恐らく、その影響によってほぼ全員の消費者が何らかの形で鬼滅の刃の情報に触れることになったこと、多くの芸能人や著名人がコスプレやSNSなどでの発信を行ったことで、鬼滅の刃への興味を飛躍的に高めることになり、それらがレイトマジョリティへ移行できた要因として大きいと考えられます。
また、2020年の紅白歌合戦に鬼滅の刃の主題歌を歌っているLisaさんが出演したことで、世の中の過半数以上が鬼滅の刃の存在を知っている状態が作られるため、一時的な流行に懐疑的なレイトマジョリティーも動かすことができたのです!
実際に私の周りでも、アニメや映画の主題歌から鬼滅の刃を知ったという人は多いです!
[まとめ]マーケティングは私たちのすぐそばに
いかがでしたか??
今回の記事では、爆発的ヒットを記録した「鬼滅の刃」について、なぜここまでの人気作となったのかをマーケティングの観点からひも解いてきました。
鬼滅の刃の大ヒットは単なる偶然ではなく、マーケティングの力によるものだったのです!その理由を知ることで、ますます鬼滅の刃の魅力にドはまりし、また今までとは違った観点で作品を見ることが出来るのではないかなと思います!
この記事を読むことで、
・もっといろいろなヒット作をマーケティングの観点から見てみたい!
・ちょっとだけマーケティングに興味がわいた!
と、少しでも思っていただけたら嬉しいです。
マーケティングと聞くと経済用語で横文字だし…と難しいイメージを抱きがちですが、実は私たちの日常にはマーケティングで溢れていて、意外とすぐそばにあるものなんです!
他の記事でもマーケティングについて書かれた記事がたくさんありますので、ぜひそちらもチェックしてみてください。