御社では採用基準をどのように考えていますでしょうか。
日本における新卒学生の採用は、基本的にポテンシャル採用です。つまり、「今は能力が何もないけど、入社してから自社が求めるこれくらいの人材には育ってくれるだろう」という推測の元で内定を出します。
その際、重要になるのが、言わずもがな採用基準です。この採用基準が不明確、または曖昧な場合、自社で成果を上げてくれる学生は採用できないからです。
今回お伝えするのは、その重要な採用基準をどのように決めればいいのかということについてです。
「そんなの、スキルが無いとしたらあとはコミュニケーション能力でしょ。」
本当にそうでしょうか?
- 「採用はうまくいっているけど、採用した人がすぐに辞めてしまう。」
- 「選考では採用基準をクリアしているのになぜか結果を出してくれない。」
このように自社の採用基準に自信が無い方は、この記事を読み進めることをおすすめします。
「コミュニケーション能力」は採用基準から外しましょう
では新卒選考で本当に見るべき採用基準についてお話ししていきます。
コミュニケーション能力は変化する
そもそもなのですが、あなたは「御社が求めるコミュニケーション能力とは何ですか?」と聞かれたときに正しく答えられますか?
もし、「それは○○で、こういった場面で必要な能力です。」と具体的に説明ができるのであれば、それが採用基準となっても良いかもしれません。なぜなら、その具体的なコミュニケーション能力を持った学生が自社の業務の中で必要だという明確な採用基準になっているからです。
ただ、コミュニケーション能力についてしっかり答えを持っているあなたも、まだこの記事の結論には達していないので、ここで読むことをやめないでくださいね。
コミュニケーション能力と一言で言っても、そこに含まれている意味は多くあります。例えば以下のようなものです。
- 会話が上手い
- 人の話をちゃんと聞ける
- 相手と打ち解けることが出来る
これらをまとめてコミュニケーション能力と呼ぶには範囲が広すぎませんか?しかも、上記のように分解してみると、あることが分かります。
それは、「これらの能力は変化する」ということです。その能力があとから伸びることもあります。
そのように変化してしまう曖昧な能力を基準にしてしまっていいのでしょうか。日本の採用担当者たちはコミュニケーション能力を重視しすぎているように感じます。
コミュニケーション能力至上主義の可能性
以下の画像は経済産業省の「2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」から抜粋した『「選考時に重視する要素」の上位5項目の推移』です。
2018年度の調査では、選考時にコミュニケーション能力を重視するという企業が全体の82.4%もいるのです。しかも16年連続です。
この調査結果から見ても、「コミュニケーション能力」を重要視している企業はかなり多くあることが分かります。「主体性」など他の能力と比較してみても圧倒的な差があります。
この数値を見た一部の採用担当者は、「わが社でもコミュニケーション能力を採用基準に入れなければ。」と感じ、他社でも基準にしているからという理由でなんとなく採用基準にしているという可能性は否めないでしょう。
近年の採用基準の傾向は、このコミュニケーション能力至上主義に陥っていると言っても過言ではありません。こういったことから、あなたの会社でもコミュニケーション能力を採用基準に入れている場合、もう一度基準を見直してみるのもいいかもしれません。
新卒選考における本当に見極めるべき採用基準の考え方
ここからは本当に見極めるべき採用基準をどのように考えていくべきなのかということに関して解説していきます。
変化する項目をどう判断するか
例として、「技術」を挙げます。あなたは、自社の入社後に必要な技術を持っていない新卒学生を不採用にしますか?
技術職ではない多くの会社では、技術をあまり重要視しませんよね。それはなぜか。
技術が変化するものだからです。
入社後に経験を積めば技術は身に付けることができます。「未来」に変化する可能性が大きいものを「今」の基準にしてもあまり良い基準にはなりません。技術の他にも、
- 空気が読める
- 知識
- リーダーシップ
など変化する項目は多数存在します。
では、技術は採用基準から外します。このように考えて、採用基準には必要が無いというものを見極めていきます。
学生を採用する際に様々な採用基準を定めると思いますが、何でもかんでも採用基準に追加していては、本当に見たい基準を見極めることができません。できなくはないかもしれませんが、見る項目が増えれば増えるほど採用が大変になります。小さい会社や採用担当が少ない会社なら、なおさらです。
とはいえ、見るべき基準というのはもちろん存在しますよね。いくら変化するとはいえ、変化のスピードには個人差がありますので、今ないものに期待しすぎるのも怖いでしょう。そんな変化する基準を簡単に見分ける方法がありますので、弊社で実際におこなっている「変化する項目はこのように見ている」という例を紹介します。
変化することが出来る学生であれば、それ以外のもっと重要な能項目を見て判断することができます。
変化することが出来る学生かを判断する具体例
これは弊社の人事部長から直々に教示していただいた方法です。お話しいただいた内容で考えた例ですので、弊社が実際におこなったものとは若干異なります。
具体例1.教養があるかを見る方法
例えば、選考の中で何度か食事会があると仮定します。その際に、上座下座という社会人のマナーを何気なく刷り込み学習させます。一度目は学生ですし、上座下座が分からなくても致し方ありません。
しかし、二回目の食事会で「社員さん、奥の席どうぞ」とさりげなく言うことが出来る学生がいたらどうでしょうか。
この学生は学習することが出来るので、変化することが出来る学生です。もし教養がある学生を採用したい。という場合は、教養は後から身に付けることが出来る(変化する)ものなので、簡単にではありますが、このように見ることも可能です。
具体例2.空気が読めるかを見る方法
具体例1と同じ状況でお話しします。一回目の食事会中に、誰か他の人が気持ちよく自分の話をしていると仮定します。しかし、ある学生はその話をさえぎって自分の話をし始めてしまいます。これは明らかに空気が読めていないです。
そのあと、みんなの前ではなく、本人にこっそりと「それは良くないよ」と注意します。そして次の食事会やグループワーク等で、同じような空気が読めていない発言が無くなったとしたら、それは改善ができたという事です。
「場の空気が読める」という変化しうるものを基準としたい場合はこのように見ることも可能です。
このように「変化する可能性はあるが、採用基準からは大幅に外したくない」というものは、簡単ではありますが前述したような方法で見ることも出来ます。
変化してしまう基準へのウェイトを減らすことで、もっと重要な採用基準を見ることに集中することができます。また、採用しても良いと思える学生を妥協せず判断できるのではないでしょうか。
入社後に変化が少ない項目が本当の採用基準
ここまでは、採用基準に入れるべきではないものについてお話ししてきましたが、最後に、本当に見るべき採用基準についてお話しします。
結論から申し上げますと、本当に見るべき採用基準は「入社後に変化が少ない項目」です。しかし、この具体的な項目に関して私から言及することはできません。なぜなら、各社によって必要な採用基準は異なるからです。
その現場で必要なものを具体的に考えてみてください。そして、その項目は今身についていないとあとから身に付けることが難しい項目なのかを考えてください。重要なのは、今持っていないと、今後も持つことが難しい能力かを見ることです。
能力の他にも、例として各学生の「就職の目的」を探ってみてください。
目の前の学生がなんのために就職したいのかを見ると、自社に合っているのか、それとも他の会社の方が向いているのかが分かります。もし就活の目的が自社に合っていない場合は、ミスマッチの原因となり、すぐに辞めてしまうことも考えられます。
例えば、自社の選考に来た学生の就職の目的が「Webマーケティング能力を身に付けて、将来独立してもやっていける能力を手に入れるため(これは私が就活生だった当時の本物の目的です)」だとします。
しかし、会社の方針として独立を推奨していなかったらどうでしょうか。選考では誤魔化せても、あとからそれが学生に伝わってしまった場合、ミスマッチとなり会社をやめる原因となります。
能力以外にも、「性格」であったり、「なぜ就職するのか」という就職後も変化が少ない項目に目を向けることが重要です。
本当に見るべき採用基準は変わらない項目にある!
今回お伝えしてきた内容を簡単にまとめるとこのようになります。
採用基準を考える際は、入社後に変化する可能性が少ない項目で、なおかつ自社に必要な能力などを採用基準にする。という事です。
今回は具体的な採用基準を提案するというものではなく、考え方をお伝えする記事だったので、これを結論としてお伝えしたいと思います。もし選考が上手くいっていない、採用基準を迷っているという方がいましたら、ぜひ今回の思考法を参考にしてみてください。